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建物50年

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先週末、建築学会山形支所が主催のシンポジウムとまち歩きに参加してきました。

山形のまちと建築がテーマでしたが、特に取り上げられたのは1960年代あたりに建てられた

建築について。ちょうど今から半世紀前のものになります。

 

まずは1952〜1961年に施行されていた耐火建築促進法によって設定された防火建築帯のこと。

山形市では山形駅前のいくつかの街区とすずらん通りのビルがそれにあたります。

その特徴として、3層のモダンなビルの高さが揃い、スカイラインが統一されています。

普段はまったく気に留めていませんでしたが、歴史的背景を知るとぐっと親近感がわきます。

 

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つぎは1968年に建てられた旧殖産相互銀行本店(現きらやか銀行桜町支店)。

設計は、いまや日本を代表する大手組織設計事務所の日建設計(当時は日建設計工務)。

シンポジウムのゲストで来ていた建築ジャーナリストの磯さんも一押しの建物です。

いま新築で建ったとしても斬新ですね。

「♯」の形にも見えるので、シンパシーを感じてしまいます(笑)

 

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そして、霞城公園内にある山形市児童文化センター(1963年)へ。

設計は、山形市生まれの建築家・松ノ井覚治(1895-1982)。

早大からコロンビア大に進みアメリカの設計事務所で修行後、37歳で帰国し著名なヴォーリズの

もとで東京出張所長をつとめ、55歳で自分の事務所を開いています。

 

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今も現役で使われています。内部を見せていただきました。

 

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この写真だけ見ると山形に建っているとは思えない佇まいです。

霞城公園の鬱蒼とした緑とあいまって独特の雰囲気を感じさせます。

 

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図書室のこども用テーブルと折り畳みイス。

 

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霞城公園の整備計画ではこの建物は近いうちに取り壊されるとのこと。

松ノ井覚治の貴重な地元における実作という意味でも、無くすに惜しい建築です。

 

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短時間のまち歩きでしたが、中心街でもこうした築50年クラスのすぐれた現代建築が

いくつも残っていることにあらためて気づかされます。

どうしても文翔館などの近代建築や蔵などに目がいきがちですが、築50年以上の建物が

一定基準を満たすと国の登録文化財に申請することもできることを考えれば、これらの建物も

これからの山形市の魅力的な資源のひとつになっていく可能性を十分秘めていると思います。

 

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