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敬意

事務所からすぐ近くにある旧吉池医院の内覧イベントが開かれると聞いて、
事務所スタッフ全員で見に行ってきました。

旧山形県庁舎(文翔館)の設計監修でも知られる米沢出身の建築家・中條
精一郎による設計で、築110年を誇る貴重な山形の近代建築です。

今年の初めまで医院として実際に使われてきました。向かいにある中央郵便
局に行く度に、惚れ惚れと外から眺めていた建物でしたが、初めて内部も2階
まで入ることができました。(内部写真は公開不可とのこと)

まずは内覧のお許しを出してくださったオーナーの方に感謝すると共に、
一世紀以上にわたってここを舞台に地域医療に尽力しながら、ここまで
綺麗な状態で建物を使い続けてこられた歴代の吉池先生に敬意を表します。

またこうした内覧の機会をつくっていただいた近代建築山形ミュージアム委員会
の皆さんのご苦労の甲斐あって、連日大勢の市民の方が見に来る一大関心事に
なりました。

国指定の重文である文翔館よりも古い建物で、十分にその建築的価値は認められ
ているものですが、民間所有の建物なのですべてはオーナーさん次第でもあります。
敷地は市中心部の国道に面した一等地、両隣はコインパーキングと個人住宅に
挟まれていて、いつマンション等の再開発の波にさらされてもおかしくありません。

これまで現役の医院建築として続いてきましたが、今後はそれに代わる機能そして
事業が入ることで活かされ続けていってほしいと思います。
医院→雑貨店への用途変更で建物が続いた事例として「まちの雑貨屋」、
築100年超の古民家→ホテルに用途変更して建物を活用した事例として「NIPPONIA白鷹 源内邸」、
等々、建物の価値をそのまま活かしながら新たな用途で使っていくことと、しっかり
事業的にも採算をとって維持していくことはできるはずです。

ぜひ山形の貴重な近代建築遺産の活用事例として積極的に使われていくことを
期待したいと思います。(シェアオフィスとしてうちが借りたいくらいです)

 

 

[ 東北|山形|一級建築士事務所|井上貴詞建築設計事務所 ]

米沢あるき

10月から来年1月まで、毎週水曜午後は山形大学の非常勤の授業(設計課題)で米沢
キャンパスに通っています。3年後期は今回でラストイヤーになる予定です。

私のスタジオでは、米沢市中心部(旧城下町)に宿泊施設を計画する課題ですが、
昨日はエスキスのあと、各学生が選んだ敷地を見がてら、ぶらりと街歩きしてきました。

歩いてみると、大きな茅葺きの古民家や蔵、水路など、山形市以上に古い建物が
残っている印象があります。ただ、個人住宅としてボロボロの状態でかろうじて
残されているものや、空き家や空きテナントとして使われない状態になっているものも
多く、つい昨年まで立派なお屋敷が残っていた場所でも、気づいたら広大な更地になって
いたりと寂しさも感じたところです。可能性はまだまだ残っているのに勿体ないです。

 

 

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瀧ノ尾

とても神聖な空気を吸ってきました。

 

 

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野バラ

先日のオープンハウスにご参加いただいた建て主OBの方から、紅い実のなった野バラを
いただいたので、事務所に飾らせてもらっています。

秋から冬に向かっていく感じがしますね。
天気が良い分、冷え込みも強くなってきました。くれぐれもご自愛ください。

 

 

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「エンドーのげそ天」がグッドデザイン金賞を受賞しました

先日発表された2023年度グッドデザイン賞において、「エンドーのげそ天」が
グッドデザイン金賞を受賞しました。

げそ天 (g-mark.org)

エンドーさん、杉の下意匠室さん、おめでとうございます!
その歩みを陰ながら拝見してきた身として、自分事のように嬉しく思います。

グッドデザイン金賞は山形県内では初、東北でも今年は唯一の受賞となったようです。
またまた人気が出てしまいそうですが、エンドーさんにはこれまでと変わらず
(変わらないとは思いつつも)そのままのペースで楽しませてもらいたいと思います。

またげそ天が食べたくなってきました、、

 

 

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山形建築ツアー(庄内町編)

庄内町に新しい図書館がオープンするということで、オープン前にちらっと覗かせていただける
ことになり、事務所スタッフやインターンの学生さん共々、皆で庄内町に行ってきました。

アテンドいただいたSさんには感謝しかありません。
せっかく庄内町まで行くので、町内にある現代建築も見て回ろうと思いました。

手前が新しい町立図書館(2023年第一期竣工、設計:シーラカンスK&H)。屋根が
二段構成になっていて思った以上に軒先が低く、外壁も周りの建物に合わせたのか
渋い色合いですでに町なかに馴染んでいます。

奥に見える内藤秀因水彩記念館(1992年竣工、設計:本間利雄設計事務所)も第二期
工事で改修され、図書館と接続されるようです。

図書館の目の前にある、巨大なキャノピーが印象的な庄内町役場(2021年竣工、設計:
香山壽夫建築研究所)。本間利雄氏とも親交の深かった香山氏がプロポーザルで
勝ち取ったこの仕事、雪国の建築的要素「雁木」が超巨大化してロビー自体を覆った
ようにも見えます。

無骨な印象の外観に対して、内部は思ったよりも木質化され、優しい印象を受けます。
床のフローリング、天井のルーバー、家具や階段の段板も木で統一されているのと、
2層吹き抜けのカーテンウォール(ガラス面)のマリオン(方立)に集成材が使われて
いるのが大きな格子状にも見えて、なおさら柔らかなイメージを持たせてくれます。

最上階の議場も品のある木製家具でしっかりつくられ、ハイサイドライトも含めて
複雑な形状の天井も明るく仕上げられていました。

役場、図書館と、町の中心がここ数年で一気に様変わりした形になります。

次は町役場から1kmも離れていないものの田圃の中にポツンと建つ、町の文化創造館へ。
響ホール(1999年竣工、設計:山下設計東北支社、音響設計協力:永田音響設計)は
約560席の大ホールと約200席の小ホールをもつ町民ホールです。

四方が開かれたロケーションなので、小ホール越しにも外が見通せて開放感があります。
この日は何も使われていなかったので、中にも入れず勿体ない感じ。

大ホールのホワイエ部分。500席規模のホールの共用部として適度な大きさです。
築後20数年経っていますが、あまりくたびれた感じはなく、キレイに維持されています。

2階の廊下は曇り空でもトップライトから光が降り注ぐ、町民ギャラリーのようですが、
特に展示もなく、こちらも勿体ない印象。

おそらく晴れた日には月山が見えるであろう2階の喫茶コーナーは、コロナ対策の
名残なのか、施錠されて入れず残念。

続いて、少し町場に戻って、庄内町ギャラリー温泉「町湯」(2014年竣工、設計:
設計・計画高谷時彦事務所)へ。東北建築賞作品賞(日本建築学会東北支部)も受賞
している良作建築です。

想像した以上に町中にあるため、駐車場に囲まれた環境となっています。
そんな中でも、伸びやかな屋根の水平線がこの場所の独自性を保持しています。

この建物の最大の特徴は、「土縁ギャラリー」と呼ばれる町家の通り庭をイメージした
ギャラリー付き休憩所。壁面にあるギャラリーボックスは企画ごとに様々な作家の
展示が行なわれるようですが、行ったときはちょうど展示の入れ替えのタイミングで
空の状態。休憩所は当初床座だったようですが、現在は椅子テーブル式となっています。

運営は町から民間に移行したようで、物や掲示がだいぶ増えているようですが、
建築の骨格やコンセプトはそのまま感じることができます。

テナントにラーメン屋が入ったり、座敷を平日はコワーキングスペースにも使えたり、
日々進化していく様子が見られました。

町湯から少しだけ移動して、JR余目駅の目の前。
庄内町新産業創造館クラッセ(2014年竣工、設計:羽田設計事務所)もまた、東北建築賞
作品賞を受賞しているリノベーション事例です。

元は90年ほど前に建てられた農協倉庫で、日本有数の稲作地帯である庄内平野を象徴する
米蔵として、日本一の規模を誇る建物です。葺き替えられた白い瓦屋根は、元々倉庫の
温度を低く抑えるための工夫であり、大屋根が全面覆われる様は圧巻です。

パン屋や土産物処、フレッシュジュース店など、いくつかのお店が入り賑やかな印象も
ある一方、メインの飲食テナントが抜けた場所はフリースペースとして開放されていました。

ツアーの最後は、庄内町と隣接する旧平田町(現・酒田市)に建つひらたタウンセンター
(2002年竣工、設計:富永譲+フォルムシステム設計研究所)へ。
せんだいメディアテークと同じく2003年度日本建築学会賞(作品)を受賞した建築です。

徹底して低く抑えられたスカイラインと、それに合うようになだらかに広がったランド
スケープがこの庄内の風景に透けるように同化しているのがアプローチからもわかります。

90年代から00年代の雰囲気もありつつ、この周囲ではあまり見ないモダンな空間の中、
一人で本を読んでいたりグループで談笑している女性達が居たり、思った以上に
自然に日常を過ごしている人の姿が見られ、とても好感の持てる空気感がありました。

2層吹き抜けの部分も多く細かいディテールも美しいのですが、公共施設にしては
かなり低めに天井高を抑えているところも多く、そのヒューマンスケールが内包されて
いることで居心地の良さにも繋がっているようでした。

 

館内では彫刻家・峯田義郎氏の作品も見られます。
外の庄内平野がガラスに反射して広がりを生むのも素敵です。

200席ほどのホールと図書館、展示ギャラリーなどが設けられ、健康福祉センター、
社会福祉協議会、商工会なども共存しています。

そのためか、老若男女さまざまな年代の方が思い思いに居場所を見つけているという
状況が築かれていました。地域の規模にも丁度よいスケール感なのかもしれません。

派手さも奇抜さもなく、看板がなければむしろ周囲の建物に埋もれてしまいそうなほどの
主張を抑えた外観です。それがかえって、周辺環境である庄内平野の水平性や
田園風景を強調させていたようにも思います。

少し小雨交じりの天気の中ではありましたが、一つの小さな町で優れた現代建築がここまで
いくつも見られる庄内町(+旧平田町)は、県内でもなかなかの建築王国といえるかも
しれません。良質な建築を見るだけでも、いろんな学びが得られます。
こうした建築ツアーを、各地でもっとしていきたいですね。

 

 

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湊の町家

週末は久々の酒田。「千日の町家」の一年後検査と、建築写真の撮影に行ってきました。
小雨が降ったり止んだりの不安定な天候でしたが、湊町・酒田のしっとりとした
情感溢れる風景が、より強く表れたのではと思います。

この一年で新しく家族に加わったこの方にもようやく挨拶ができました。
写真が仕上がったら、ウェブサイトのworksにもアップしたいと思います。

 

 

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道中、小休止

 

 

 

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五月菜

建て主さんからいただいた葉物野菜。
五月菜は建て主さんが育てて収穫したもの、ニラは今回建てる敷地(元々畑)で
採れたものだそうです。

これから山形は山菜も豊富に採れ出す、良い時期になってきましたね。
土地の恵みをいただきながら、工事監理も頑張ります。

 

 

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春を告げる

事務所のある小姓町周辺は、大小の寺社が点在しているのですが、事務所から歩いて数分
のところにある大日堂は、400年前からこの場所に存在してきた由緒あるお寺です。

お祭りが近いのか、境内の入口付近に木造の「門灯籠」が建ち、提灯が吊されて
昔ながらの高揚感を醸し出しています。

何より目を引くのが、道路際に建つ二本の幟。
木綿生地には50年以上前の祭典日に奉納されたことが記されています。

支柱が大きくしなりながらも、風に吹かれてゆらゆらはためいています。

年に一度の幟の立つ短い期間ですが、春の到来を告げる循環の一端に触れるようで、
とても尊い場面に映ります。

 

 

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